JASRACの監督官庁はどこだろう

監督官庁である文化庁の役人が、管理される側のJASRAC天下りし、一般常識から見ても際立って高い給料をもらい続けているという構造は、明らかな「Conflict of interest状態(=『国民の利害』と『役人個人の利害』が衝突している状態)」であり、うまく行くはずがない。
http://blog.japan.cnet.com/nakajima/archives/003395.html

この文章を読んで、ふと疑問に思ったのは「JASRAC監督官庁ってどこだろう」って事なのである。ちょっと調べてみると、社団法人は公益法人の一つであり、公益法人に置いて監督官庁(主務官庁)は絶大な権限を持っているようである。

民法の規定により、公益法人の設立許可及び指導監督に関する権限は、その目的・事業に関連する事務を所掌している内閣府及び10省の中央官庁に与えられています。 この中央官庁のことを主務官庁といい、その目的・事業が複数の中央官庁の所掌に関連する場合には、それらの中央官庁が共管として主務官庁になります。
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主務官庁にこれほどの権限があるのであれば、JASRACと主務官庁が癒着しているのは大問題である。JASRACの理事長に文化庁出身者が就任している以上は、文化庁JASRACに監督する事は難しいに違いない。しかし、本当にJASRACの主務官庁は文化庁なのであろうか。


そんなわけで、JASRACの定款を調べてみたわけだが、ちょっと驚いた。主務官庁がどこであるか記されていないのである。「主務官庁に報告する」とか「主務官庁と協議する」とか、主務官庁に関する記載はあるのだが、主務官庁がどこであるのかは記載されていないのである。例えば、SARAHのサイトには以下のように記載されており、SARAHの主務大臣は文部科学大臣経済産業大臣であることが明記されている。

(3) 財産の状況又は業務の執行について不整の事実を発見した場合の理事会及び総会並びに文部科学大臣及び経済産業大臣(以下「主務大臣」という。)への報告
http://www.sarah.or.jp/info/info01.html

そもそも、上の記述には主務官庁は「内閣府及び10省の中央官庁に与えられています」とあり、文化庁は社団法人としてのJASRACの主務官庁になる事ができないと解釈することができる。つまり、文化庁は社団法人としてのJASRACを監督する権限はないと言うことが言える。


JASRACのサイトを見ると、以下のようにある。

JASRAC民法34条の規定にもとづき設立の許可を受けた公益法人で、著作権等管理事業法にもとづき文化庁長官の登録を受けた、音楽の著作物にかかわる著作権の管理事業者です。
http://www.jasrac.or.jp/recruit/guide/faq02.html

ここでも同様に、「民法34条の規定にもとづき設立の許可を受けた」とあるものの、具体的にどの主務官庁から設立の許可を受けたかは曖昧である。一方、文化庁長官の登録を受けたとはあるものの、これはあくまで著作権等管理事業法に基づいた物である。



以上のことを整理すると、以下の2点にまとめられる。
1.「社団法人としてのJASRAC」の主務官庁ははっきりしない
2.文化庁はある種の監督権限があるものの、この権限は著作権等管理事業法に基づいている


なぜ私が著作権等管理事業法にこだわっているのかというと、この法律はJASRACのみに適用されているわけではないからだ。つまり、文化庁JASRACを監督する権限を持っているが、それは他の民間企業を監督するのと同じ次元でしかない。文化庁JASRACを特別扱いできないし、また、文化庁JASRACを強力に指導する権限は持っていないと言う事を意味する。


次回へと続く。