危機からの脱出「無人地帯」

ESCAPE! No Man's LAND
Film Roes 1999

時は1970年の1月1日。東ドイツの青年による、たったひとりの脱出物語。東ドイツの未来に絶望した青年の脱出を描いているのだが、脱出劇の奥に自由社会と共産社会の対比が透けて見える。

なんというか、すごいね。居酒屋で酔っぱらった帰りに、西ドイツへの脱出を思いつくというのがすごいし、思いつきを即座に実行に移したというのがすごい。

なにせ、あの東ドイツですよ東ドイツ。そんなに詳しいわけではないが、ベルリンの壁を乗り越えようとして射殺というのはよく聞く話。それだけに、綿密な計画を立てて協力者が不可欠とばかり思っていたが、この青年はたった一人で脱出に成功してしまった。

ドイツというのはなんでもかんでもシステマチックにしてしまう。そのようなドイツ人が心血を注いで脱出を阻止しようと言うのだから、これはそう簡単には抜けられない。

国境には幅五キロの警戒区域があり、そこには筋金入りの共産党員しか住むことができない。また、警戒区域の内側には監視塔があり、狙撃兵が待機している。そこを抜ければ、その次には頑丈で高い鉄条網が待っており、鉄条網脇ではジャーマンシェパードが見張っている。鉄条網の奥には監視区域が待っており、地雷も敷設されている。地雷原を抜けると無人地帯があり、無人地帯で発見されると即座に射殺される。

このような警戒網をくぐり抜け、青年は国境まであと一歩のところまで辿り着くのだが、地雷の爆発に遭い大けがを負ってしまう。しかし、幸か不幸か地雷の爆発によって西ドイツ国境警備隊が青年の存在に気が付き、命を懸けて国境を乗り越え、救出するというお話。

感想としては、やはり当時の東ドイツの粘着じみた国境警備に重さを感じる。ここまでして、国民の流出を阻止しなければならない国家とはなんなのだろう。国民が逃げていくからと言って、鎖国して流出を防ぐというのは問題の解決にはならないよね。単に問題を先送りしているだけで。

抑圧された政治は、長く続くものではありません。一時的には人々を抑えつけることができますが、永遠にできることではありません
Hagon Koch
Former East German Stasi Officer