韓国の音楽業界は見守る必要がある

http://hotwired.goo.ne.jp/original/koreamusic/index.html

オンライン化によって韓国の音楽業界の状況が激動を迎えていると言う記事。

ブロードバンド業者や、携帯電話キャリアなど、通信会社が幅をきかす一方でもっとも割を食ったのが音楽業界だ。ピーク時には4000億ウォン(約430億円)を超えていた音楽CD市場は2001年を境に急激に下落。毎年約1000億ウォンペースで下がっていき、2004年は1000億ウォン(約106億円)まで落ち込んでしまった。日本の音楽業界もここ数年音楽CD市場は冷え込む一方だが(ピーク時の1998年が6074億円で、2004年が3773億円)、下落率で言えばまだまだかわいいもの。韓国の音楽CD市場はたった4年で何と4分の1まで縮小してしまったのだ。

韓国ではオンライン音楽サービスが盛んだとは聞いたけど、ここまで既存の音楽業界に打撃を与えているとは知らなかった。記事中で「韓国が90年代末からブロードバンドを普及させるため、国策として流れるコンテンツの著作権について厳しく取り締まらず、甘い姿勢を取っていたことが背景にある」と言っているけど、これは昔の日本と同じみたい。

岡本薫氏*1によれば

問題は、「産業セクター」です。日本の産業セクターは、かつては外国のものを使うことが多かったために、「著作権を弱めてくれ」という意見が強かったのです。ところが最近は、コンテンツ産業という10兆円規模の産業が発達してきましたので、「権利を強くしてくれ」という声が産業界の中で強くなってきました。
成蹊大学 JASRAC寄附講座 2003年度 第二回講義 著作権制度の基礎(1)

このように、日本もかつては著作権を利用する立場だったので、著作権は弱ければ弱いほど都合が良かった。しかし、コンテンツで商売できるようになったので、流れとしては著作権強化の方向に向かっていると言うことである。これは経済産業省にとっても同じようである。経産省は、かつては著作権を軽視していたのだが、最近になってレコード輸入権の導入にも力を貸しているようであり、著作権を保護することが日本の産業界にとって利益に繋がるという考え方にシフトしている。


さて、韓国の話である。このニュースは大変に興味深い。「無料で音楽を入手するのがあたりまえ」と考えている消費者や携帯電話キャリア、オンライン音楽配信業者。それに対して、オンラインサービスからなんとしてでも金を取ろうとする音楽業界。

ジョン:それはないでしょうね。今韓国の音楽業界を見渡してみると、ネットやデジタルに対応できないアルバム企画会社(日本における音楽事務所やプロダクションのようなもの)がどんどん潰れています。残っている会社はどこもオンライン音源専門の信託会社を作ってデジタル時代に対応しようとしています。

日本の音楽業界は規模が大きく、時代に合わせて柔軟な対応を取ることができにくくなっているが、韓国では状況がかなり異なるようだ。なんとしてでも時代に対応しようと言う、前向きな音楽業界の姿が透けてくるようである。


このように、記事は大変興味深い内容であるのだが、一つ残念なところがある。韓国のオンライン音楽市場がどの程度のものか、記載が全くないのだ。

日本でも韓国同様CDの売り上げは落ちているのだが、音楽DVDの売り上げ上昇や、着メロや着うたなど、オンライン音楽市場が拡大しておりCDによる減収がカバーできている。このおかげで、CD市場が冷え込んでいると言われつつも、JASRAC著作権使用料収入はここ数年記録を更新し続けている。韓国でCD市場が急激に落ちているのなら、その分をオンラインからの音楽収入で補わなければならないはずだが、その辺りはどうなのだろう。

CDビジネスが急速に先細っている中、韓国のオンライン音楽市場は確実に拡大しているという事実は興味深い。今後オンライン音楽ビジネスが失敗して韓国の音楽産業が壊滅的な状態になる可能性は否定できないが、個人的にはそれと同じくらいオンライン音楽への移行が成功する可能性もあると思う。

と著者は言っているが、その言葉に説得力が感じられなかった。


ともあれ、韓国の音楽業界は著作権に関する実験場となっているようだ。今後、注意深く見守る必要がある。

*1:文化庁著作権課前課長