「補償金廃止論の明と暗」について考える 前編

小寺信良:補償金制度廃止論にまつわる明と暗 (1/4) - ITmedia LifeStyle

パブリックコメントを控えて、祭り状態となっている感もある私的録音録画補償金制度ですが、小寺さんが非常にいい文章を書いておられますね。「明と暗」と言うタイトルに相応しく、録音録画補償金廃止論のメリットばかりでなく、デメリット面もきちんと書いていますね。なにより、「著作権の複雑怪奇さをきちんと書いている」ところがすばらしいと思います。

もちろん、腐敗やもたれ合いの構図、意味を持たない返金制度や利益分配の矛盾が存在すること自体が社会悪であるとして、純粋な正義感から廃止すべきとの意見を小委員会に送るのは、正しいことである。あるいは僕らの大好きなApple社を悪の手から守れ、という行動原理もアリかもしれない。法で決まった原則論で行くべき、という主義もありかもしれない。しかし一時的なムードや、なんかおいしいことがあるかも、という期待で廃止に傾くのであれば、別のリスクが発生する可能性があるということは、知っておいた方がいい。

この文章中の、「期待で廃止に傾くのであれば、別のリスクが発生する可能性があるということは、知っておいた方がいい」と言う文に同意します。そう、著作権はある方向からある方向に変えると、別なリスクが発生するものです。

例えばフェアユース。「法律で細かく決まっているのはおかしい、フェアユースを導入しろ」とか「アメリカではフェアユースと言って、公正な使用なら著作権が適用されない。日本でも導入しよう」と声があります。しかし、フェアユース制度は、何が「公正な使用」にあたるのかは裁判所が判定するものなのです。「同人誌は公正使用の範囲外」と言う判決が出たのなら、一瞬にして同人誌は著作権法の違反になってしまいます。利用者の権利を守るはずだったフェアユースが、一瞬にして利用者を縛ってしまう。そう言うリスクもあるわけです。

では、録音録画補償金制度を廃止する事で、どんなリスクが考えられるでしょうか。後編に続きます。