新聞見出しの著作権

http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20051006i116.htm
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20051006it11.htm

色々な面で、重大な判決だと思っています。


要旨を見る限り、見出しの著作物性は否定されたとは言え、読売新聞社の主張がほぼ全面的に通ったと考えます。また、今回の見出しに関して著作物性が否定されたのであり、見出しだからと言って著作物性を否定したというわけでもなさそうです。

とりわけ、YOLの見出しは、読売新聞東京本社の多大の労力、費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること、著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの、相応の苦労・工夫により作成されたものであって、簡潔な表現により、それ自体から報道される事件などのニュース概要について一応の理解ができるようになっていること、YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば、YOL見出しは法的保護に値する利益となり得るものというべきである。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20051006ic27.htm

見出しの著作性を否定したにも関わらず、法的保護の対象となるのはどういう事かと思いましたが、著作隣接権と同じような考えなのでしょうね。日本の著作権法では、本来著作権を持っていないレコード会社や放送局に対して、「著作隣接権」を認めているわけです。今回の判決も、著作隣接権同様に新聞社の「労力と費用」の回収を保護していると言えそうです。


個人的に、重要な指摘だと思ったのが以下のくだり。

ネット上では大量の情報が高速度で伝達され、利用者に多大の恩恵を与えていることは周知の事実である。しかし、価値のある情報は、何ら労力を要することなく当然のようにネット上に存在するものではなく、情報を収集・処理し、これを開示する者がいるからこそ大量の情報が存在する。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20051006ic27.htm

これは基本的にはデジタルアライアンスに向けられた言葉なんでしょうけど、ネット利用者一人ひとりに向けられているようにも思いました。ネット上では利用者の発言力が大きく、情報を自由に使わせろ、自由に加工させろ。嫌なら最初からネットにアップするなと言う声をよく耳にするのですが、そのような意見に対する警鐘だと、私は受け取りました。今回の判決の根底に流れているのは、「情報を得るのなら対価を支払え」という事なのでしょうね。