インフルエンザと予防接種

インフルエンザ危機(クライシス) (集英社新書)をぱらぱらと読んでみたら、ちょっと驚くことが書いてあった。

日本ではかつてインフルエンザワクチンの集団接種というものがあった。私の頃は強制だったが、高学年の時に任意に切り替わったように思う。任意になると当然接種が下がったように記憶している。その集団接種も、今はなくなったと聞く。

なぜなくなったかと言えば、効果がなかったからと言うことらしい。前橋医師会がインフルエンザワクチンの集団接種に関してデータを取り、その結果集団接種には効果がない事が判明したそうである。これに関しては批判もあるが、当時の日本では「インフルエンザワクチン=無意味」と言う考え方が主流になったのは間違いないところであろう。

前橋医師会の、いわゆる前橋レポートでは結論を以下のようにまとめている。

われわれは,ワクチン集団接種を止めてから5年間,調査を続けてきたが,ワクチン中止により,前橋市でインフルエンザ患者数,流行期医療費,超過死亡,学童罹患率の指標すべてにおいて,流行激化の徴候を認めなかった。また,学童の欠席曲線を検討すると,全国の流行が大きい時は前橋市の流行も大きく,全国の流行が早く始まる年には前橋もまた早く始まるという具合で,流行の規模も,パターンも,時期も,全国と並行していた(II−3−A参照)。小地域の観察ではあるが,ワクチンを止めても,さしたる変化はないと考えてよいと思われる。ワクチンによって「守られている」という思い込みを捨てて,虚心にワクチンの社会防衛機能を測定するべきであろう。ワクチン非接種地域におけるインフルエンザ流行状況

しかし、インフルエンザ危機によれば、集団接種が中止された影響が現れているようなのである。

これ以降、インフルエンザワクチンを打つ子供は極度に減り、年間に製造されるインフルエンザワクチンは極端に減少した。そしてその結果はというと、インフルエンザにかかる人が増加し、死亡者も増えてしまったのである。一方的な解釈で「ワクチンは効かない」と主張した人たちの意見を通してしまったために、多くの犠牲者が出てしまった。ワクチン集団接種中止に関わったすべての関係者の責任は、ひじょうに重い
インフルエンザ危機(クライシス) (集英社新書)p.158-159


ネット上で関連する情報を検索してみたら、インフルエンザワクチンの過去,現在,未来(pdf)と言うレポートを発見した。このレポートでも、インフルエンザワクチンの有効性を指摘している。

しかし,学童集団接種が実施されていた1970 年代,1980 年代のインフルエンザによる死亡者数
(超過死亡)を調査してみると,1990 年代に比べて大幅に低く,1994 年の集団接種の中止以降,インフルエンザの死亡者が急増していることが,最近,我々と米国の研究者による共同研究により明らかにされた4).日本の超過死亡は,学童に対するインフルエンザワクチン接種の開始に伴って,それまで米国の3〜4 倍であった死亡率が,米国と同程度にまで低下した(Fig. 1).日本の学童への予防接種は,1 年間に約37,000〜49,000 人の死亡を防止したことが明かとなった.その後,学童への予防接種が中止されたために,日本の超過死亡は上昇した.
インフルエンザワクチンの過去,現在,未来(pdf)P.10