小泉首相とチャーチルのメモ

昨日に引き続いて、またもや日経BPの記事。

知人の官僚で、小泉純一郎首相に経済政策を説明するための資料を作成している人物がいる。彼曰く、「小泉首相に手渡す資料では、1ページにつき20字×3行、合計60字以上、文字が並んでいると読んでもらえない。そんな不文律がある。文字が長くなりそうな場合、60字で止めて、後は余白にグラフや図表を多用するのがコツ」なのだそうな。
「ダ・ヴィンチ・コード」とかけて「小泉改革」と解く:日経ビジネスオンライン


この記事を読んだとき、まず連想したのは理科系の作文技術 (中公新書 (624))に出てくる英国首相、チャーチルのメモである。

 1940年、壊滅の危機に瀕した英国の宰相の座についたウィンストン・チャーチルは、政府各部局の長に次のようなメモを送った


われわれの職務を遂行するには大量の書類を読まねばならぬ。その書類のほとんどすべてが長すぎる。時間が無駄だし、要点をみつけるのに手間がかかる。
同僚諸兄とその部下の方々に、報告書をもっと短くするようにご配意ねがいたい。
(i)報告書は、要点をそれぞれ短い、歯切れのいいパラグラフにまとめて書け。
(ii)複雑な要因の分析にもとづく報告や、統計にもとづく報告では、要因の分析や統計は付録とせよ。
(iii)正式の報告書でなく見出しだけを並べたメモを用意し、必要に応じて口頭でおぎなったほうがいい場合が多い。
(iv)次のような言い方はやめよう:「次の諸点を心に留めておくことも重要である」、「……を実行する可能性も考慮すべきである」。この種のもってまわった言い廻しは埋草にすぎない。省くか、一語で言い切れ。
http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Book_Index/Etc_R_RSG.html


どうだろう、表現は異なるものの、小泉首相が要求していることと同じなのではないだろうか。「要点を簡潔に」や「図表やグラフを多用」すると言う点で、共通点が感じられる。

筆者の寺山氏は、単純化した資料を要求している事を持って小泉首相を批判しているようなのであるが、私は小泉首相が有能な証拠なのではないかと考える。小泉首相が、資料を60字にまとめさせているというのは、それだけ仕事をしているからであり、一つの文章に長い時間を割く余裕がないからだと思う。

ちょっとぐぐってみると、小泉首相が尊敬している政治家はチャーチルなのだそうだ。チャーチルのスタイルを取り入れたのか、それとも激務で仕事をしている政治家は皆同じ事を考えるのか知らないが、ちょっと面白さを感じた。