消費者とメーカーの利害の対立

津田氏: 補償金の議論についても、いちばんがんばっているのがJEITA電子情報技術産業協会)や日本メディア工業会ですね。
対談 小寺信良×津田大介(2):私的録音録画制度に潜む問題 (2/3) - ITmedia LifeStyle

確かに、JEITAや日本メディア工業会は補償金廃止について頑張っているが、消費者のために頑張っているわけではないと思う。補償金を廃止した方が、金銭的にメリットがあるから頑張っているのだと考える。

その証拠として、文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第3回)議事録から日本メディア工業会の主張を二つほど引用する。

ところが、この95円の中に補償金の4.4円が入っておるわけですけれども、ユーザーはこれを御存じない。95円というものの中に4.4円が含まれるということを御存じないであろう、というふうに考えます。

4ページ目になりますけれども、今まで製造メーカーがこの補償金を全部、今ももちろん負担しておるわけですけれども、実質的にはコストとして吸収してきております。理屈上はコストじゃないのは分かっておりますけれども、現実の運用上はコストの中の管理項目にならざるを得ない。これだけ売価が下がってまいりますと、もうそういう形での吸収が現実のものでもできないレベルになってきている


この二つの発言から、私は以下の事を読み取った。

  1. 日本メディア工業会は自分たちの都合で補償金を廃止したがっている
  2. 日本メディア工業会は「メーカー」が補償金を払っていることに対して不満を持っている
  3. 日本メディア工業会は補償金をコストとして捉えている


今のところ、メーカーや消費者は「補償金廃止」と言う点で同じ方向を向いている。しかし、補償金制度が廃止された場合でも、同じ方向を向くことができるのだろうか。

補償金制度は本来「消費者」が払っているわけで、補償金制度が廃止された場合には消費者に還元されるのが筋道であると言える。つまり、補償金の分だけメディアの値段が下がらなければおかしいわけだ。しかし、メーカーが補償金を「コスト」として捉えている以上、補償金廃止分が実売価格に反映される事はないのではないかと、私は考える。

メーカーは正義の味方ではなく、あくまでも自分たちの利害によって動いていることを忘れてはならない。利用者に求められるのは、利用するべきは利用し、対立するべきは対立する態度でないかと考える。