ゲド戦記

さて、ゲド戦記の感想でも書くか。一言で言えば「ひどくはなかった」作品だろうし、もう一言付け加えるならば「普通につまらなかった」作品だと思う。矛盾しているかも。


ひどくはなかったというのはどういう事かというと、発泡酒みたいなものだ。発泡酒はビールの代用品である。ビールの風味も味わいも抜けている訳だが、「まずい」とは言えないでしょう。代用品としては十分だろうし、ビールを飲んだことがない人にしてみれば、美味しいと思う人がいるかもしれない。ゲド戦記もこれと同じで、宮崎アニメの代用品として考えればそれなりだろうし、アニメを見慣れない人がいれば、面白いと思うかも知れない。人に「観ない方がいい」と言い切ることができない映画である。


普通につまらないというのは、面白いところが何もなかったという所だ。キャラクターの造形が不十分で、何を考えているかいまいち分からない。伏線を十分に張らずにストーリーが展開しているので、観客が置いてけぼりにされてしまう。キャラクターに命が十分に吹き込まれていないので、人間ではなく泥人形に見えてしまう。などなど、平均的につまらない。


ひどさという点で、映画版デビルマンと比較している向きもいるようだが、デビルマンとは比較にならない。デビルマンは「ひどい映画」だと正面切って言うことができる。しかし、「ひどい映画」だと言い切れる時点で、デビルマンは観客の心に何かを残しているのだ。何かが心に引っかかっているからこそ、悪評になっている。観客と正面切って戦っている映画だと言うことができる。対して、ゲド戦記は、観客の心に何も残さないのだ。見終わった後は空虚感のみ。


「ひどい映画」だと正面切って言い切れない事が、ゲド戦記の悲劇ではないだろうか。