言葉遊びをしてみよう


白田先生が岡本薫氏の「著作権=人権」説に対して、ご自身のウェブで批判されておられる。


まず、岡本薫氏の文章を先に引用する。

また、知的財産権は「私権」であって「規制」ではない ── ということに注意する必要がある。著作権は、「国際人権規約」にも規定されている「私権(人権)」のひとつである。これに対して「規制」とは、本来は人が自由にできるべきことについて「官」が「民」をコントロールする制度のことであり、例えば「建蔽率とか容積率とかについて、行政が作った基準を満たして許可を得ないと、自分の土地に自分の家を建てることもできない」というのが「規制」である。これに対して、「他人の土地に無断で自分の家を建ててはいけない」というのは、他人の「私権」(財産権)を侵害するからであって、「規制」の問題ではない。
著作権の考え方」(岩波新書


次に、白田先生の批判文を引用させて頂く。

基本的人権を支えるために、このA規約において文化的権利を保障することを締約国に要求する。その具体的内容の一つとして知的財産権をすべての者に対して認めなさい」と書いてあることになる。で、読者に問う。それゆえ「知的財産権=人権」? 私にはそう読めない。もし岡本先生の説が正しいとすると、私は日本語すらマトモに読めないことになる。こまったなぁ。
http://www.welcom.ne.jp/hideaki/hideaki/mrmakino.htm


一見、白田先生が妥当なことを言っているように思う。しかし、白田先生の文章をよく読むと、文章がすり替えられていることに気が付く。白田先生は、岡本薫氏が「知的財産権=人権」と言う考えの持ち主だと主張しているのだが、引用されている岡本薫氏の文章では「知的財産権は、人権の一つである」と主張している。この岡本氏の説が正しくないとすると、どういう事が考えられるだろうか。


例えば、国際人権規約の第9条1項を引用してみる。

すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。
市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)


これに基づいて、白田先生の文章を言い換えてみる。

基本的人権を支えるために、このB規約において市民的及び政治的権利を保障することを締約国に要求する。その具体的内容の一つとして身体の自由及び安全についての権利をすべての者に対して認めなさい」と書いてあることになる。で、読者に問う。それゆえ「身体の自由及び安全についての権利は人権の一つである」? 私にはそう読めない。もし岡本先生の説が正しいとすると、私は日本語すらマトモに読めないことになる。こまったなぁ。


さて、岡本先生と白田先生、どちらが妥当な事を言っているのであろうか。