何とも言えない判決

手術をしても余命約6カ月の大腸がんと診断され、術後7カ月に別の病気で死亡した女性(当時71歳)の遺族が「別の病気で死んだのは術後管理のミス」として、病院側に約4500万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は22日、約1300万円の支払いを命じた。女性はほぼ診断通りの余命だったものの、藤山雅行裁判長は「ミスがなければ、人生の最期を自宅で家族と過ごすことができたはずで、女性は精神的損害を受けた」と慰謝料請求を認めた。
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061123k0000m040145000c.html


この裁判は前から気になっていたのだが、ようやく判決文がアップされていた。
平成16年(ワ)第203号損害賠償請求事件


最初に思ったのは、マスコミは相変わらず大事なことが抜けているって事。「人生の最期を自宅で家族と過ごすことができたはず」って事で敗訴したと言うのでは、医師に取っては納得がいかないだろうし、もちろん、一般人にとっても納得いかないだろう。マスコミは、以下の部分も併せて報道するべきだったと思う。

亡Aは敗血症性ショックに陥って以降、入院を継続しており、その間、意思表示ができず、家族とも十分にコミュニケーションがとれない状態であったことが認められる。

「意思表示ができず、家族とも十分にコミュニケーションがとれない状況」に陥ったからこそ訴訟を提起したわけだね。これなら一応は納得出来る。


判決の妥当性に関しては、私はコメント出来る立場ではないですね。医師でない人が見ると、ある程度説得力を持った内容の判決文に読める。反面、医師に取ってはとうてい納得出来るような判決文ではないだろう。医師の領域に踏み込みすぎているような印象を受けるし、都合のいい主張ばかり切り貼りして、原告側が勝訴するようにし向けたと読めないこともない。ただ、この判決文を否定するのは難があるようにも思う。*1


藤山判事の裁判だけに、高裁で逆転するかも知れないが、そうなった場合はどのような論理で逆転を試みるんだろう。興味ありますね。

*1:ところで、裁判長は証人Nの意見をかなりの範囲で受け入れているようだけど、Nってのはどういう立場の人なんだろう