JASRACと独占禁止法
成田ケーブルテレビについて調べていたら、偶然見つかった。
7 被控訴人らの抗弁(5)(独占禁止法違反)について
被控訴人らは,本件使用料規程は,CS放送の同時再送信の使用料算定方式については文化庁長官の認可を受けておらず,極めて不合理な内容になっており,独占禁止法19条の規定を受けて定められた一般指定14条3号,4号に違反するものであり,無効と解すべきであると主張する。
しかしながら,本件使用料規程が文化庁長官の認可を受けたものであることは上記6のとおりであり,また,これが独占禁止法19条に違反する不公正な取引であるとは認めることはできない。
平成17(ネ)10012 平成17年08月30日 知的財産高等裁判所
なんだかトートロジーのように思えなくもないが、文化庁長官の認可を受けた以上、独占禁止法上における不公正な取引とは認められないという判決なんでしょうね。知財高裁で、JASRACの使用料規程が独占禁止法に反しないと判断された以上、同種の裁判は起こしにくくなるだろうし、公正取引委員会もJASRACの使用料規程に関しては文句をつけにくい状況な訳でしょうか。
もう一つ見つかった。こっちは名古屋のダンス教室裁判の、地裁判決文。
[被告の主張]
加えて,原告が音楽著作権の使用許諾の市場における独占的な地位を濫用して,契約条件を交渉の余地なく認めさせようとする行為や,不均衡に高い損害金の額を提示して,その5分の1以下の額で契約を結ばせようとする行為は,独占禁止法19条の不公正な取引方法に当たる。[裁判所の判断]
原告が管理著作物の利用者に対し,法に従って,使用料規程に基づく使用料の支払を求める行為は,著作権ないしその支分権の信託を受けた者として適法な権利行使であることは明らかであり,被告らの主張するように,独占禁止法19条の「不公正な取引方法」に当たることはない(同法21条参照)。そもそも原告が被告らに請求しているのは,不法行為に基づく損害賠償金の支払ないし不当利得に基づく利得の返還であるから,被告らの上記主張は失当である。
被告の主張は、JASRACに反感、不満、批判的な意見を持つ方々なら一度は胸に抱いた主張であるとは思うけど、これも裁判官に無下に否定されてしまっている様である。被告側が「JASRACは自分の巨大さを頼みに、不公平であり不利益な契約を結ばせようとしている。これは独占禁止法に抵触するだろう」と、ほとんど悲鳴に近いような主張をぶつけているのであるが、裁判官は冷静に「JASRACは権利者から権利を委託されている。また、法に基づいた使用料規程を根拠に使用者に支払いを求めている。これは法律に則った行為である」と言っている。
以上、2つの判決を紹介した。個人的な感想としては、独占禁止法でJASRACを追いつめるのは、この2つの判例がある以上、現行法上では無理のように思う。ただ、最高裁ではどうなるか分からないので、訴訟を起こす価値はあると思いますが。