文化庁は霞ヶ関の中で孤立しているのか


池田信夫氏が以下の様に仰っている様なのだが、本当に孤立しているのかな。

当時経済産業研究所にいた私は、霞ヶ関の中で文化庁は孤立していると感じた。当初、経済産業省は産業を振興し貿易を奨励する立場にいたから、レコード輸入権について「ダメ」といった。が、当時経済産業省のある課長が、輸入権を認める代わりに公正取引委員会に言って再販制度は廃止する、という交渉をしようとした。が、結果レコード輸入権は通り、再販制度は現状維持のままに終わった。
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しかし、経産省の広実メディアコンテンツ課長*1は、まさに産業政策の観点からレコード輸入権に賛成していたようである。確かに、以前は経産省レコード輸入権に関して反対の立場を取っていたらしいが、2000年頃から方向を転換していたと読み取れる。著作権を強化したい文化庁と、産業政策の立場からコンテンツ業界を支援したい経産省の思惑が一致した結果、レコード輸入権の創設に繋がったのではないか。

こういう輸入権についてある業界に導入するという問題です。今日大きな議論になっているのは、再販制の問題です。再販制というのは公正取引委員会のペーパーにも、文化、公共的側面から導入された措置と書いてありますが、我々は輸入権というのは産業政策的側面から導入していただきたいと思っています。ですから、両者は導入の観点は違うんですが、消費者レベルでは競争制限という一定の効果をもたらすというのは否めない事実です。
レコード輸入権に関する意見交換会(P.33)

ところで、池田氏の記述をみると、文化庁経済産業省を無視し強行的にレコード輸入権を通したとのように読み取れる記述がある。これだけでは誤解される方も多いと思うので、若干補足する。文化庁が他省庁の圧力や意向、権益を無視して法案を通すことは、不可能なのである。文化庁レコード輸入権の法案を提出したと言うことは、経済産業省総務省など、利害が対立する可能性がある省庁に根回しをした上で、反対意見を取り除いたという事である。経済産業省と合意しなければ、法案は提出できないので*2誤解なきように。

事務次官等会議」とは、明治19年1886年)にスタートし、現在も続いている各省庁の官僚のトツプである事務次官が集まる会議のことだ。
会議を主催しているのは、事務の官房副長官。そのため事務次官“等”が付いているわけだ。
この事務次官会議で通された法案だけが、閣議と呼ばれる首相や大臣が出席する政策決定会議にあげられる。
 言い方を換えれば、事務次官等会議を通過しなければ、政治家の下に法案も届かないことになり、
しかも事務次官会議は全員一致でなければならない。つまり事務次官等会議に法案があがるまでには、
あらゆる関係省庁に根回しをし行い、談合した上でなければどんな法案も通らない。
http://www.lightroom.jp/the-number.htm

*1:池田氏が仰っている方と同一人物の可能性もあるね

*2:レコード輸入権貸与権の様に経済産業省の意向を汲んだ法案もあるし、逆に経済産業省の反対によって提出できない法案もある