パロディ条項とフェアユース

フランスではパロディ権が認められていると言う話や、パロディが著作物として認められているという話をよく耳にする。そのような話は、たいてい「先進国では表現の自由著作権から守るものとしてフェアユースが定められており、パロディなどの正当な使用行為が権利として認められている」と続くような印象を受ける。そこで、パロディ条項について調べてみた。

第122の5条 著作物が公表された場合には、 著作者は、 次の各号に掲げることを禁止することができない。

(4) もじり、 模作及び風刺画。 ただし、 当該分野のきまりを考慮する。
http://www.cric.or.jp/gaikoku/france/france_c1.html

一見して、アメリカのフェアユース規定とは異なるなと言う印象を持った。アメリカのフェアユース規定であれば「もじり、模作及び風刺画」とは書かない。フランス著作権法は個々の権利制限が列挙されているので、日本の著作権法に近い。もっとも、これは日本の著作権法がフランスの考え方を汲んでいるだけの話だが。

さて、個人的には「当該分野のきまりを考慮する」と言うところに注目したい。フランスはパロディの国と言われるだけあって、何がもじりで、何が模作で、何が風刺画なのか、きちんとローカルルールがあるのではないか。権利者と利用者との間で、ローカルルールがきちんと共有されているからこそ、フランス著作権法のパロディ条項が成立するのではないかと思った。言い換えれば、「もじり」の定義に関してはローカルルールを参照する。ローカルルールから外れたと見なされた場合は、著作権法が適用されるという事ではないだろうか。


日本の場合、パロディ条項を採用するのであれば「もじり」「模作」「風刺画」の定義について、著作権法に明文化されるか、文化庁ガイドラインを作るか、裁判所が定義するのではないかと考えられる。それではパロディ条項の意味がないではないかとも思うが、パロディの定義をお上が決めない場合、利用者側から「もじりの範囲をはっきりさせろ」と言う主張がでてくるに違いないと思うのだが、考えすぎだろうか。