「風雲!たけし城」訴訟雑感

TBSによると、「風雲!たけし城」や同番組のコンセプトを同局から購入して作られた番組は、アメリカなど約50カ国で、「SASUKE」など2番組は同国で放送されている。「Wipeout」は、6〜9月に放送され、ABCの今年最大のヒットとなった。一般視聴者が屋外でアトラクションに挑戦するなどの番組の基本構造やナレーション、撮影方法などが、TBSの番組に似ているという。TBSは「当社のみならず、テレビ番組という貴重な財産を守る観点から、裁判所の判断を仰ぐのが最善と判断した」としている。
http://mainichi.jp/select/world/news/20081007k0000e040020000c.html


ネット界隈では「番組フォーマットは著作権にあたるのか」と言う事が話題になっているようだが、私としては「番組フォーマットは著作権で処理した方が都合が良いのか」と言う点がポイントになってくると思う。


番組フォーマットを著作権で保護すると言うのは、「アイデアを保護しない」と言う著作権の本質から考えればイレギュラーな事である事は間違いない。しかし、仮に裁判所が「番組フォーマットは著作権で保護されない」と判断した場合、番組フォーマットビジネスが崩壊してしまう可能性がでてくる。アメリカの放送局は日本をはじめとする各国に番組フォーマットを販売してきた訳だし、日本だって各国に番組フォーマットを販売しようとしているわけだ。しかし、判決によっては、番組フォーマット保護の法的根拠が失われてしまう可能性がある。恐らく、アメリカの放送業界は「TBS空気読め」と苦々しく思っているに違いない。


判決になった場合、アメリカの裁判所は空気を読んで、番組フォーマットを著作権で保護するという判決を出すのではないかと思う。そして、他国の著作権行政担当が苦労する。


ただし、判決まで至るのかなと思う。と言うのは番組フォーマットビジネスが崩壊して、最も困るのはアメリカだと思うから。番組フォーマットビジネスが崩壊するようなリスクを冒してまで、裁判で争うのかなと言う疑問がある。ABCや番組制作会社に取って一番望ましいのは和解だろう。つまり、TBSと正式に契約し、たけし城のライセンスを購入した上で番組を放送する。


恐らく、TBSが訴訟を起こしたのも、ABCや番組制作会社に対するブラフだろう。仮に訴訟で負けた場合でも、TBSは損をしないと思う。アメリカのテレビ業界が持つ、膨大な番組フォーマットがパクリ放題になるだろうから、敗訴したとしてもTBSに取ってメリットはある。


勝訴、敗訴、どちらに転んでも損はしない事を見込んで訴訟を起こしたというのなら、TBSは大した企業だと思う。