真の問題点を理解するのは、アマチュアに取って難しい

社会福祉とは簡単に言えば、「ある人が病気になった場合それはその人の不幸であり、したがって社会はその不幸をなるべく軽減しなければならない」であるべきですが、麻生某やその追随者たちはこれを反転させています。すなわち「ある人が病気になった場合それは(その人にコストをかけなければいけない)社会の不幸であり、したがって個人は社会の不幸をなるべく軽減しなければならない(健康に生きる義務!)」。
健康帝国日本 - 過ぎ去ろうとしない過去


日本という国は、既に「健康に生きる義務」を国民に課している訳なのだが、麻生さんの発言に関連して、「健康に生きる義務」に触れていたマスコミの報道やブログはきわめて少ないように感じた。つまり、真の問題点が認識されていないという事なんだろう。麻生さんの失言より、重大な事がこの国で行われているのだが、その事は多くの人には知られていないという事なんだろう。

健康診査の実施率に応じてペナルティを課すことにより、保険者が被保険者に健康診査を受けさせるインセンティブを組み込むという話しは知ってはいた。しかしながら、メタボリックシンドロームの減少率に応じて保険者にペナルティを課すという話しは、恥ずかしながら、6月20日の健保理事会ではじめて知った。


その時も、常識から判断してあり得ないから、にわかに信じがたかった。だって、この制度が知れわたると、大学の中を見るからにでっかい人が歩いていたら、みんなが、彼のせいで慶應の健康保険料が高くなっているんだよなぁと思うようになるわけで、本当にそういうことが起こったり、その種の会話が冗談でも交わされるようになってよいのか?と言っても、いくら冗談で話してみてもあまり笑えないよ、お金がからんでいるから。それに医師の目からみれば、ウェストが120cmくらいありそうな人こそリスクと隣り合わせにいるから、すぐにでも保健指導を実施していきたいところであろうけど、彼に指導をしてみても5年間で85cmのウェストになりそうには見えないとすれば――保険財政的には保健指導で85cmのウェストになりそうな人に保健指導をすることが、実に効率的になってしまう。


さらには、5年以内に退職しそうな人には、お金をかけて保健指導をすることは避けたいというインセンティブも、しっかりと組み込まれてしまうことになる。
勿凝学問97 健康帝国日本 ウソのようなホントウのはなし?

麻生さんの発言を批判する事自体は構わないし、批判されて当然の発言だろう。健康保健制度を否定するという批判も、その通りだと思う。しかし、マスコミをはじめとする麻生さんの批判者が、メタボ検診の事について触れないというのはよく分からない。それこそが真の問題点だろうに。


麻生さんの失言は分かりやすいし、誰でも批判できる。一方、メタボ検診は健康保健制度に巧妙に組み込まれてしまい、プロでもない限り、批判が難しいものになってしまうと言う事なのだろう。ネットや、マスコミによる素人の言説だけでは本当に重要な事は解りにくい。真の問題点はプロの方が積極的に発言する事により、はじめて浮かび上がるという事なのだろう。