所得税の増税は難しいと思う、たぶん


世の中には面白い事を書く人がいて、以下のような文章を平気でウェブに掲載している人がいる。

 最高税率と適用所得額を下げ続けた結果、所得税の見直し論になれば、高額所得者の増税は必至の状況にある。だからこそ、消費税増税より税負担が重くなる税制改革から目を反らそうと、一途に消費税増税に賛成するのだろう。
http://www.news.janjan.jp/government/0812/0812073037/1.php


消費税の増税を否定し、所得税増税を肯定するのは構わない。「高額所得者」という但し書きを付けてしまっているのが一つの問題だと思うのだが、自分から進んで税金を払いたいという人が存在するわけがないな。この方に限らず、ネット上の所得税増税肯定論者はなぜか「所得税増税し、高額所得者に多く払わせよう」と言う見解が目立つ。これは「自分だけは税金を払いたくない」と言うさもしい根性を露呈してしまう事になるのと思うのだが、人間誰しも税金を払いたくないのは当然なので、仕方がない。



問題にしたいのは、所得税を見直すと、本当に高額所得者だけが増税されるのかと言う事である。物事を知らない人は簡単に思うかも知れないが、これがなかなか難しい。権丈先生のサイトより、一つの図を転載してみる。


それから、とても残念なことに、日本には高額所得者が、はじめからそんなにいない。
のみならず、10%以下の所得税率ブラケットに8割の人がいる。
勿凝学問199 消費税と所得税、僕はどっちでもいいですけどね 政治家さん達は、どうぞ政治リスクをご勘案下さい


どうだろう。この図を見る限り、所得税率が10%以下の方が多数を占め、それ以上の方は少数を占める事が分かる。このような状況で、所得税率の見直しを行ったら、所得税率が高い方を増額しても何の意味もなく、所得税率が低い方を増額するほかなくなる。高所得者の税率を上げても構わないんだけど、実効性に欠けると言わざるを得ない。高所得者に対する低所得者の嫉妬を和らげる事には多いに役立つんだろうし、日本人は感情さえ満足すれば構わないんだろうけどね、あまりに不合理なので私は賛成しない。


と言うわけで、所得税の見直しは低所得者層をねらい打ちにするだろうし、サラリーマンをねらい打ちにするのは目に見えている。所得間対立を煽る所得税の見直しより、消費税を上げる方がまだまとまるんじゃないのかな。それでもなお所得税を見直したいという皆様におかれましては、是非ともサラリーマンを説得して頂きたいものです。