日本の衛星放送は確かにガラパゴスだとは思うけど

池田信夫氏が衛星放送ビジネスについて文章を書かれていたので、読んでみた。

ASCII.jp:なぜディズニーはBS免許を拒否されたのか (1/2)|池田信夫の「サイバーリバタリアン」


私は違和感を覚えた。何を言っているか意味が通らない。一見、何か良いことを言っているようで、考えると訳が分からなくなってくる。見出しを読んでいる内に、違和感の原因が分かってきた。

・FOXは合格で、ディズニーとBBCは不合格
ガラパゴス化したBS放送

前者と後者は関係がないのに、池田氏は関連性を見いだそうとしている。ディズニーとBBCが不合格になったからと言って、BS放送ガラパゴスという理由にはならないのではないか。

要するに既存のBS局と競合しないように有料放送だけを選んだということだ(ディズニーはCMを収入源とする、無料放送による参入を計画していた)。 

かつてCS(通信衛星)放送が発足するときも、有料放送だけに限るという規制を行なって、CS放送の経営難の原因となった。このように既存の地上波テレビ局を守るために新規参入を妨害する規制が日本の放送業界の経営を悪化させ、世界から孤立させてきた。
ASCII.jp:なぜディズニーはBS免許を拒否されたのか (1/2)|池田信夫の「サイバーリバタリアン」

池田氏は「日本のBSデジタル放送を保護するために、総務省が規制を行った。日本のBSデジタル放送はお上の過剰な規制に保護された、ガラパゴスだ」と主張しているが、BBCは有料放送を計画していたのだ。

BBCとディズニーが、2011年7月以降に追加されるBSデジタルの新チャンネル獲得のために免許を申請。BBCは家族層向けの有料放送を、ディズニーは無料の娯楽番組を予定。この他、NBCユニバーサルやFOX、アニマックスなど蒼々たる面々もBSデジタルへの参入を希望。
BBCとディズニーがBSデジタルに参入 | iPod LOVE

BBCが有料放送を計画していた以上、池田氏の論理は破綻することになると思うのだ。



ガラパゴス化したBS放送」に関しても、池田氏は不可解なことを言っている。

ところが日本は、BSというガラパゴス技術にこだわったため、こうした世界の流れに取り残され、BSもCSもほとんどの局が赤字だ。せめてディズニーのような魅力的なチャンネルが参入すれば、衛星ビジネスの展望も開けたかもしれないが、そのチャンスも総務省がつぶしてしまった。衛星ビジネスは、競争を恐れる既存業者を役所が守る結果、業界全体が沈没する日本経済の縮図である。
ASCII.jp:なぜディズニーはBS免許を拒否されたのか (2/2)|池田信夫の「サイバーリバタリアン」

池田氏は、日本の衛星放送ビジネスが低調だと述べている。そして、ディズニーの様な魅力的なチャンネルが参入しなかったことを嘆いている。しかし、ディズニーも、BBCスカパー!に参入しているのである。ディズニーが参入している事は、池田氏の論理を借りれば「日本の衛星ビジネスの展望は開けた」と言えるのだが、その点を無視し、「競争を恐れる既存業者を役所が守る結果、業界全体が沈没する」と断言した事に、私は違和感を覚えるのである。


日本の衛星放送ビジネスが、いわゆる「ガラパゴス」という事は否定しない。BSとCSが混在すると言うのは世界的には珍しい。なぜ、BSとCSが切り替わらずに混在したのか、疑問は残る。

その一つの手がかりが、ディズニーとBBCにあるではないだろうか。既にCS放送に参入しているにもかかわらず、なぜディズニーとBBCBS放送に参入したのだろうか。それを掘り下げていくことによって、日本の衛星放送が「ガラパゴス」である理由や必然性が見えてくるのではないだろうか。


日本が「ガラパゴス」であることを批判するだけでは面白くない。日本が「ガラパゴス」となった理由や必然性を掘り下げる方が、私にとっては興味深いことだし、面白いことなのだが、池田氏にとってはそうでなかったのだろう。残念なことではある。