ダウンロード違法化の真犯人


文化庁よりの立場から、id:copyright氏のエントリーについて考えてみた。
社会正義に反しない行為が「違法」とされた - Copy & Copyright Diary

社会正義に反しない行為を、「違法だ」としてしまうことの、その重大さをどれだけ認識しているのだろうか?

私も同意である。そして、文化庁も同様に思っているのではないだろうか。「個人のダウンロードは社会正義には反しない。だからこそ、改正著作権法では、個人のダウンロード行為に関して罰則を設けなかったのではないだろうか。

個々のユーザーがパソコンなどで複製すること自体が社会正義に反するというよりも、さまざまな方がファイル交換ソフトやインターネットを使ってダウンロードすると、総体として正規配信に悪影響を与えているということ。そうした観点から、今回の改正では個人を罰則により罰するのは不要ということ。
ニュース - ダウンロード違法化、「アップ対策だけで秩序は保てない」:ITpro

ポイントは、川瀬氏はRIAAに招かれて講演していると言うこと。RIAAは言うまでもなく権利者団体である。権利者側が今回の改正著作権法をどのように思っているかというと、cnetに詳しく書かれている。

ただ、悪意を持たないユーザーであれば依然として第30条に規定された私的使用として認めているほか、悪意を持った確信犯的な違法ユーザーの場合でも罰則規定を設けていないなど強制力は弱く、施行前から効果を疑問視する声もある。
「違法ダウンロードは社会正義に反さないが、権利者に悪影響」--文化庁 - CNET Japan

つまり、権利者側は決して満足していないのだ。文化庁が業界におもねり、ダウンロード違法化を行いたいのであれば、罰則規定を設けただろうう。社会正義の点から言って、「悪意を持った確信犯的なユーザー」に対して罰則を設けるのは許されるだろうし、権利者側もそれを強く望んでいたのだろうと思う。それにも関わらず、罰則規定を設けなかったのは、法案作成者である文化庁がダウンロード違法化に慎重な姿勢を抱いていたからだろうし、権利と使用のバランスを考慮していたからではないだろうか。つまり、文化庁は一種の抵抗勢力として行動したとも考えられる。


しかし、文化庁が抵抗したところで、今後も「悪意を持った確信犯的なユーザー」が大手を振って歩くのであれば、私的複製が規制されることは目に見えている。真に私的複製を守りたいのであれば、矛先を向けるべきは文化庁ではなく「悪意を持った確信犯的なユーザー」なのではないだろうか*1

*1:もっとも「悪意を持った確信犯的なユーザーの権利」を保護したいというのであれば、文化庁は敵もいいところですが