軍事費は財源たり得るか

id:bogus-simotukare氏のブログより

事実なら、喜ばしいことだと思います(「冷戦終了後ずっと」ならともかく「7年連続で減少」を「長年」といえるか疑問ですし、正確な年数や金額等を書かないことにうさんくささも感じますが)。軍事費は「保険料」みたいなものですから。必要ではあるでしょうが、「保険料」に金をかけすぎて、「衣食住や教育費」等を必要以上に切り詰めたら、生活は困難です。「軍事費」も同じだと思いますね(「衣食住や教育費」等にあたるものとしては「教育予算、福祉予算、景気対策予算、公共事業予算」等)。
2009-08-27 - bogus-simotukareの日記

軍事費や公共事業費を削って、医療や介護、福祉に回そうという考えは珍しいものではないし、世間一般の方にも受け入れられやすいとは言えよう。そこで、軍事費が他の重要分野の財源の足しになり得るか、考えてみることにした。


まず、前提条件。絶対額ではお金の大小を感覚的につかみにくいので、対GDP比で考えてみる。


軍事費:1%(2000年)
公的教育費:3.5%(2004年)
公的医療費:6.6%(2005年)


これを見るだけでも、軍事費が医療費、教育費の妨げになっていない事がよく分かると思う。軍事費は教育費や医療費より、遙かに規模が小さいのだ。ただ、規模が小さいとは言っても、軍事費を削れば、なにがしかの足しにはなるかも知れない。


次に、教育費や医療費にどの程度の額が必要なのか、見ていこうと思う。

文科省は今年7月に初めて策定した教育振興基本計画で、10年後に公財政支出をGDP比5・0%まで引き上げる目標を明記しようとしたが、財政再建を目指す財務省の強い反発から、見送りとなった経緯がある。
http://sankei.jp.msn.com/life/education/080924/edc0809240848004-n1.htm

文科省が目標とする公的教育費はGDP比5.0%。これを防衛費だけで賄おうとすると、予算を全てカットしても足りないのである。防衛費をちょっとやそっと削減したところで焼け石に水。つまり、防衛費を削減したところで教育費の足しにはならないのである。



では、医療費はどうだろうか。

また医療費に占める公的支出をみますと6.5%で、OECDの平均 7.4%を1%近くも下回っていて、先進国のなかでは最低です(こちらはフランスの8.9%が最高となっています)。
http://meiwakai.org/ikiikijinsei/doctsukamoto111.htm

公的医療費に関しても、OECD平均を目標とした場合、軍事を全廃しなければ目標にたどり着けなくなってしまう。

医療費、教育費に関しては軍事費削減だけでは財源たり得ない事が分かると思う。軍事費を削って医療費、教育費に回すと言う事は、説得力があるように思われるが、実はポーズに過ぎず、軍事費を削ったことで満足感に浸っているだけであり、問題は何ら解決しないという事なのである。



軍事費を削ると言う議論は構わないが、軍事費を全部削ったところで医療費や教育費の足しになるわけではない。医療や教育が崩壊の危機に関していることは確かだが、これに関しては軍事費以外の財源が必要であり、軍事費を削って医療や教育に回すという議論は、時間の無駄であると私は思う。


最後に、社会保障の専門家である慶応大学商学部教授の権丈善一先生の言葉を紹介して、このエントリーを終わることにする。

よく共産党系や社民党系の医療関係者は,軍事費を使えと言います。日本の軍事費はずっとGDP の1%なんです。今ですと5兆円です。これを全額使ってもドイツ並みになりません。それに,軍事費を全部使ってゼロにして,それを医療費に回した頃には,外交渉力が弱まって,今よりももっと米国からの『年次計画要望書』の言うことを聞かなければいけなくなっていますよ。世の中はそういうメカニズムで動いているんですけどね。
権丈教授に医療政策をきく(第2回)