著作隣接権、およびレシピの著作権

ミステリー作家・藤岡真氏のホームページに、気になる記述があった。

当然ながら、そのCDの使用許可は取っているんだろうね。『威風堂々』は作曲者エドワード・エルガー著作権こそ消失しているが、CD制作会社に使用許可を得ること、演奏者等の著作隣接権をクリアすることなしに使用したら、知的財産権侵害で有罪になる。大の大人が、有料のイベントを開催しながら、未だにこうした犯罪を繰り返している。自己の著作を持つ人間が、ここまで杜撰な態度をとることは信じ難い。
http://www.fujiokashin.com/criticism/7.html

文章を読む限り、唐沢俊一氏は、劇場内で音楽を使用する様だが、その場合も著作隣接権は適用されるのか疑問に思い、ネットで検索することにした。著作権情報センターのサイトを参考にする。

唐沢俊一氏がイベントでCDを流すと言うことは、著作権法では「演奏」となる。しかし「演奏」には著作隣接権が及ばないのである。作曲者の著作権が消失しているというのであれば、「演奏」に関しては著作権がクリアされていると言えるのではないだろうか。

実は、実演家とレコード製作者には、著作者のような演奏権は与えられていないのです。したがって、CDを用いて音楽を流す場合には著作隣接権は及ばないということになります。しかし、将来の話としては、実演家とレコード製作者の演奏権が問題となることも考えられます。
http://www.cric.or.jp/qa/sodan/sodan5_qa.html


もちろん、著作隣接権は演奏以外にも存在するわけであるが、見たところ、今回の唐沢俊一氏の行為に該当するものは無いようだ。
著作隣接権とは? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC

さて、藤岡真氏は、何を根拠にして唐沢俊一氏が犯罪行為を犯していると主張しているのであろうか。もちろん、何かしらの根拠はあるのだろう。根拠がないのであれば「自己の著作を持つ人間が、ここまで杜撰な態度をとることは信じ難い」という言葉がそのまま藤岡真氏に降りかかることになるからね。そうそう、名誉毀損も立派な犯罪行為ですよ。



もう一つ。今度はレシピの話。

勿論レシピにだって著作権はある。自分の著作物の剽窃云々で訴訟のどうの騒いだくせに、岡田は知的財産権に関しては全く無知だと言っていいだろう。
http://www.fujiokashin.com/criticism/8.html

おお、何という主張であろう。レシピに著作権があると、ここまで断言した方は他にいないに違いない。わくわくして読み続ける。

例えば、いま、ここでおれがなんかのレシピを書いたとする。

 春の生野菜サラダのすき焼きドレッシング

 春キャベツは千切りにして水にさらしておく、つまみ菜はよく洗い、水を切っておく。これに千切りの人参、ジャガイモを加えよく混ぜる。昨夜の残りのスキヤキを上からかけ、好みで一味、もしくは七味唐辛子を振りかけていただく。

 この瞬間に、このレシピ(文章)には著作権が発生する。したがって、おれ以外の人間が、この文章をあたかも自分のオリジナルのように、著作物やネットに発表した場合、おれはその人物を訴えることが出来るし、絶版回収、削除等の要求も出来、常識的にその要求は認められる。

そ、そうなのかな……。


著作権は著作物に発生するのだが、法律では以下のように定義されている。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
e-GovSearch

私が読み解く限り、藤岡氏が書いた「レシピ」なるものは、作り方の手順を淡々と書いたものに過ぎず、「思想又は感情を創作的に表現したもの」とは言えないのではないだろうか。

この文章に著作権が発生すると主張することは、催告書を著作物として主張する読売新聞と同レベルなのではないかと私は考えるのであるが、藤岡氏の思想や感情が込められているというのであれば、それは私の読解力の欠如と言うことになる。あとは、裁判官の判断次第。


以上、とりとめもなく、書いてみた次第である。そうそう、私は唐沢俊一氏のファンである事を付け加えておく。