CIAの大失態?

ぶくまで話題になっていたこの記事。

 アフガニスタン東部のホースト州にある米中央情報局(CIA)の基地で自爆テロが発生。7名のCIA要員と1名のヨルダン政府関係者等が死亡した。「一度にこれだけ多数のCIA要員が殺害されたのは、過去30年間を振り返っても例がない」と言われており、米国の諜報史上に残るCIAの大失態として記録された。
米国諜報史上に残るCIAの大失態:日経ビジネスオンライン

確かに、失態だとは思うけど、大失態とまで言えるのだろうか。そもそも、この記事を読むと、自爆テロ自体は失態とは言えないんじゃないのかな。

この小さな基地を指揮していたのはCIAきってのアルカイダのエキスパートである。過去14年間にわたってアルカイダを追い続けたこの女性は、このテロ組織に関しては「百科事典」のような知識を持つ専門家だったが、今回のテロで死亡した。

 この後に「パキスタンタリバン運動(TTP)」が出した犯行声明によれば、彼らははじめからこの女性を狙ってダブル・スパイ工作とテロ攻撃を仕掛けていた様である。
米国諜報史上に残るCIAの大失態 (4ページ目):日経ビジネスオンライン

この女性が狙われたと言う事は、「パキスタンタリバン運動」はこの女性がアルカイダのエキスパートである事、その女性が基地にいた事が「敵」に把握されていた事であり、CIAはそのことを把握していなかったと言う事になる。その事自体が失態であり、自爆テロで女性を失った事は、CIAに取っては些細な事に過ぎないと思うんですよね。


で、この件をなぜ「大失態」と呼ぶ事が出来ないかというと、話は簡単。CIAにはそれより酷い失態があるから。簡単に言うと「ソ連・東欧のスパイ対策を統括した男がKGBに寝返った」という事件。そのせいで、CIAによるソ連や東欧のスパイ活動が大打撃、壊滅的な打撃を受けたと言う失態がある。なお、CIAはこの男がKGBに寝返った事に9年間気がつかなかった。


Wikipediaに簡潔に書いてある。

金銭的な困窮を理由に、自らアプローチしてソ連KGBのスパイとなった。当時の役職は「工作本部東欧局防諜部長」である。この役職は、ソ連・東欧の情報員(CIA工作官も含む)のすべての情報(最高機密)を知り得る高位の役職であったため、ソ連側に高額な対価を要求し、それが受け入れられると、「トップクラスの情報提供者10人以上のリスト」を漏洩させ、(全員が逮捕され、自供してほとんどの情報提供者が死刑にされた)CIAの活動に壊滅的な大打撃を与えた。 その後も、1994年に逮捕されるまで、約9年間に渡ってスパイ活動を続け、数千件の情報を提供し続けた。
オルドリッチ・エイムズ - Wikipedia

また、CIAの内情を伺わせるレポートもある

九四年二月に事件が発覚した当初は、エイムズはCIAで定期的に行われるポリグラフ(嘘発見器〉検査をくぐり抜けた、と言われていたが、実はそうではなかった。エイムズは検査に引っかかっていたのである。報告書によると、KGBに情報を流し始めて約一牢後の八六年のエイムズの検査記録には、「外国の情報源との承認されていない接触」について、嘘をついている、と記録されている。ところがCIAの検査官は、エイムズを“合格”させていた。この段階で何らかの処置を行っていれぱ、被害はまだ押さえられたかもしれなかった。
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私の印象では、CIAは失態を繰り返している組織であり、今回のヨルダンの件にしてもCIAの弱さが、組織としてのダメさ加減が表に出ただけではないのかなと思う。情報機関を過小評価する気はないが、「スパイ」というイメージが先行して、スパイや情報機関を色眼鏡で見る傾向があるのかもしれない。