9・10話

#9 北部地球防衛軍あやうし
AVALANCHE

舞台は北部地球防衛軍基地。外気温度は零下28℃なので、基地内の温度や湿度を一定に保っていなければならない。そのエアコンのメンテナンスを行うため、防衛軍基地に向かっていた整備補給車の整備員、エディがミステロンに殺害され、ロボットにされる。同時に、スペクトラム基地にミステロンからの予告が入る。「北部地球防衛軍基地の重要ラインを四時間以内に破壊する。四時間以内に破壊する」 間をおかず、RED DEER基地に異変が起こる。自動緊急連絡が中央指令室に届くも、中央指令室からの応答に誰も答える者がいない。スペクトラムは北部地球防衛軍基地にキャプテンスカーレットとグリーン少尉を派遣し、調査を行う。RED DEER基地の250人は全員殺されていたにも関わらず、放射能反応も毒ガス反応もない。スペクトラムの調査は難航し、その間にCARIBOO基地も全滅させられてしまう。部下を大量に殺され怒り狂った地球防衛軍総司令軍は、見境なく火星のミステロン基地を攻撃する事を決意する。苦慮するホワイト大佐。しかしキャプテンスカーレットが基地内の酸素が欠乏していることを突き止め、同時にエンゼル隊により整備補給車の破片が発見される。エディがミステロンのロボットであり、エアコンの整備を装って、エディが空気中の酸素を取り除く薬品を仕掛けておいた事が判明する。キャプテンスカーレットとグリーン少尉は追跡戦闘車でBIG BEAR基地へと向かうが、時すでに遅く整備補給車は基地を既に去っていた。後手に回るスペクトラムだが、グリーン少尉は基地のエアコンを点検し、薬品を取り除きBIG BEAR基地の危機を未然に防ぐことに成功した。キャプテンスカーレット追跡戦闘車で整備補給車に向かう。ミステロンは液体酸素を満載した整備補給車で特攻を仕掛け、総司令部を破壊するつもりだったのだが、キャプテンスカーレットが、拳銃で雪崩を発生し、崩落した岩石により整備補給車を破壊することに成功した。総司令部は破壊を免れ、ミステロンの復讐は失敗に終わったのであった。

説得力があるとはこういう話。

冒頭で以下の三点をきちんと明示してあるんだよね。

  1. 基地の外気温度は極めて低いので、エアコンで温湿度を一定に保たなければならない
  2. エアコンは常にメンテナンスされなければならない
  3. 基地は密閉されている

だから、ミステロンがエアコン整備士を狙う事に説得力が出てくる。エアコンはメンテナンスされなければならないんで、整備士が出入りすることは自然だし、整備士ならエアコンに細工することも簡単である。基地の気密性が高いので、ミステロンの「基地内の酸素を取り除く」作戦が有効だと言う事も理解しやすいわけですな。よく出来ていると思う。


不死身以外は能力を発揮しないはずのキャプテンスカーレットが普通に大活躍している。ちょっと物足りない。しかも、全く怪我をしておらず得意の不死身能力を披露していない。ケガがないキャプテンスカーレットは、コーヒーのないクリープみたいなものなんだが。


いつもは連絡役で現場に出たい出たいと言っているグリーン少尉が珍しく出動し、かわりの連絡役はブルー大尉。ブルー大尉は沈着冷静なので、連絡役にいても違和感がない。グリーン少尉より頼もしく見えるのは、大尉である以上当然か。


今回の見所は、やはり北部地球防衛軍の司令官のドキュン振りですな。「力は正義なり」とか言うスローガンを机に置いているあたりが既に危ない人ですが。部下が大勢犠牲にされたからと言って、直接火星にミサイルを撃ち込もうというのだから困った者だ。そもそも、ミサイルくらいで滅ぶ相手ならば、とっくの昔にスペクトラムが絶滅している訳じゃないか。


で、ラスト。

ワード司令官「ああ、大佐か。君に免じて、今日君が取った態度は忘れてやってもいい」
ホワイト大佐「はい、それはありがとうございます」
ワード司令官「まあ、君たちの腕は認めるが、今回は我々の力によって勝ち得た勝利だと言えるな。私が攻撃を決意したことを知って、ミステロンはおじけづいて攻撃を中止した。私の言うとおりにすれば、いつもこの通りうまく行くのだ」

正直、これほどムカつく人もあまりないよね。対抗できるのはボトムズのカン・ユーくらいなものか。ワード司令官はじめ北部地球防衛軍は何も活躍していないのに、手柄を自分のものにするってのは腹立たしい。現実的にはこういう人間は珍しくないし、出世することさえ珍しくないんだろう。

ただ、このような人間が出てくるからこそ、キャプテンスカーレットは面白い。



#10 エンゼル機対ミステロン
SEEK AND DESTROY

フェアフィールドエンジン会社より、一つのコンテナが搬出されていたが、ブラック大尉の手により、コンテナは積荷ごと炎上する。ミステロンの今回のターゲットは、驚くことにエンゼル部隊。「今度は、スペクトラム・エンゼルの誰かを殺す。スペクトラム・エンゼルの誰かを殺す」との予告。折しも、コンチェルト・エンゼルが休暇でパリにいっていた。スペクトラムはコンチェルトの身を案じ、キャプテンスカーレットとブルー大尉をパリへと派遣する。カフェでコンチェルトと合流し、やれやれ一安心と息を付く暇もなく、ミステロンが攻撃を仕掛けてくる。炎上したコンテナの中身はスペクトラムに納入するエンゼル機であり、ミステロンはそのエンゼル機をロボット化し、デスティニーの襲撃に使用したのであった。ホワイト大佐の命を受け、キャロル、サリー、ファンタジーの3機のエンゼル機がパリへと急行する。ミステロン・エンゼルの攻撃により、コンチェルトはピンチに陥るが、危ういところでスペクトラム・エンゼルに救われる。なおも執拗にコンチェルトを殺そうとするミステロン・エンゼル、それを迎え撃つスペクトラム・エンゼル。デスティニーの命を懸けた、一大空中決戦が今始まろうとしていたのだ。スペクトラム・エンゼルの一機を打ち落とすサリーであったが、彼女自身もミステロン・エンゼルに撃墜されてしまう。キャロルがもう一機を撃墜し、残るミステロン・エンゼルは残り一機。スペクトラム・エンゼルは数的優位を作り上げるが、ミステロン・エンゼルは高度を徐々に下げていく。ミステロン・エンゼルは地上に激突し、キャロルも危うく激突しそうになるが、首尾よく機体を引き起こす事に成功した。


実にストレートなお話。キャプテンスカーレットにしてはひねりも何にもないけど、こう言う展開は実に燃える。エンゼル対エンゼルの一大空中決戦。数も互角なら、性能も互角。差がつくのはパイロットの技量のみ。エンゼルの実力の見せ所な訳ですが、ミステロン・エンゼルが全滅したのに対し、スペクトラム・エンゼルは2機残っている。エンゼル編隊の実力の高さがうかがえる描写ですな。


とは言え、「スペクトラム・エンゼルの誰かを殺す」と思わせぶりな予告をする以上、もう少しひねって欲しかったんだけどねえ。結局ターゲットは最後までコンチェルトだった。撃墜され、脱出しているサリーなんて格好の的だと思うのだが、ミステロンも人が良すぎるな。

ラストシーン、部下を手放しで称賛するコンチェルトと、エンゼルを称賛するブルー大尉。

コンチェルト「あんな見事な事が出来るのはキャロルだけだわ。本当に素晴らしいパイロットね」
ブルー大尉「いや、みんな素晴らしいさ。さすがはエンゼルだ」

この他にも、コンチェルトはカフェで香水を楽しんでいたりして、性格が表に出ています。前にも書いたんだけど、キャラ描写の豊かさがキャプテンスカーレットの魅力だと思う。


フェアフィールドエンジン会社の社長のお言葉。アンダーソン夫妻の作品らしく、なにげなくマニアックな事を言っている。こんな事さらっと言われても意味が通じないだろうと思うのだが、当時のイギリスではこの程度の事は普通に理解できたのかも知れない。

今だから言えるが、実は、スペクトラムに収めるジェット機なんだ。型及び性能は最高機密でね、部品はメーカーに分けて作らているんだ。製造面では我が社はエンジンだけを請け負っていて、そして私の監督の下に密かに組み立ててここへ運んでいたんだ。この次は仕上げの段階でね、ある会社が飛行テストと塗装を行って収める予定なんだ


冒頭のシーン、台詞が追加されているね。

運命に選ばれた一人の男がいる
ミステロンとの戦いに巻き込まれた男
決然と立ち向かう不死身の男
その名は、キャプテンスカーレット