尾鷲の産婦人科問題

関心を持ってウォッチしていた。おおむね、皆さんと同じ意見だと思う。


尾鷲のような所で、363日24時間体制で産婦人科医の激務に耐えてくれた方に対して年俸の減額は失礼な話だと思うし、産婦人科の不足が叫ばれているご時世、五千五百万円でも高くないと思う。一部市議の「三千万円出せば大学病院の助教授が飛んでくるのに、四千八百万円は高過ぎる」発言に対しては、「馬鹿だねえ、実に馬鹿だねえ」と言う他ない。この先生のモチベーションが下がるのは当然だし、一部市議は責任を持って三千万円で呼ぶべきだと思う。


ただ、ちょっと気になることがある。

五嶋院長
医師が28人から現在では18人に減り、年間24万人の患者を受け持っている。とにかく医師は全員頑張っている。この1年で産婦人科医師が152人の出産を受け持ったことは評価できるが、次は院内医師と同じような給与に近いかたちで来てくれればありがたい。
産科医師との契約断念〜尾鷲総合病院 市長記者会見で報告〜


この発言を聞いて「おや」と思った。病院の院長であれば、産婦人科医がどのような勤務条件で、どのような監禁生活を送っているのか分かるはず。しかし、その激務の産婦人科の先生に対して「院内医師と同じような給与に近いかたちで来てくれればありがたい」とあり、なんとなく、病院内でのトラブルを伺わせる。この産婦人科医師の高年俸に対して、他医師が不満を感じていたとか、給与の格差問題が発生していたのだろうか。


そう思って、市議会発言を読み返してみると、確かに高年俸が話題になっている。と言うか、一部市議の発言を含めて、「産婦人科の年俸が高くないか」「他医師が納得しているのか」と言う点に論点が集中している印象を受ける。2、3個ほどクリッピングしてみる。

市長
内科を中心に医師はとにかく医療に努力してくれている。この1年、5520万円で院長に院内の医師を説得してもらった。それでも医師から「われわれは懸命に働いている。次の報酬は納得できるように」と何回か直訴を受けた。院内の感情も踏まえて慎重に検討して4800万円を提示した。
市長に更新交渉一任

市長
医師の感情は強い。この1年で複数の医師から「基礎データに基づいた納得できる査定を」と強い直訴も受けている。その上で、政治的判断で来てもらったのだから例外的な報酬もやむを得ないとの認識はしてもらっている。
他医師の了解が先決

市長
いま医師1人ひとりに相談すれば4800万円を下回る額になると思う。
他医師の了解が先決


医師を口実にした可能性があるが、病院長の発言を踏まえると、この産婦人科医と病院の他医師との間にある程度の軋轢があったと考えられる。産婦人科ばかりが厚遇されることに、他の医師は納得しないと言う事なのかも知れない。


今後、産婦人科は間違いなく減少するだろうし、残っている医師に対しては高年俸高待遇でつなぎ止める事は間違いない。単科病院や医院なら問題ないが、総合病院だと他の勤務医と軋轢が起こりかねない事になる。現状で、開業医と勤務医が対立していると聞いているが、その勤務医の中でも産婦人科と他部門の対立が起こることになるのであろうか。