リニアモーターカーに賭けるJR東海の執念

例えば、リニアモーターカーの開発はもう四十数年継続されているのに、実用化の予定はない。研究のための研究か、もしくは、単なるスピード競争のために国費をタレ流している。開発を継続するうちに、在来技術による鉄道でも最高速度が時速500キロを超えてしまった。このようなプロジェクトは、さっさと中止するべきではないか。
時間軸を無視した“国家プロジェクト”の罪:日経ビジネスオンライン


確かに無駄な「国家プロジェクト」はさっさと中止するべきだが、リニアモーターカーを「国家プロジェクト」と分類するのは、JR東海に対して少々無礼な決めつけだと思う。と言うのは、リニアモーターカーは国家プロジェクトの範疇を離れて、「JR東海の民間プロジェクト」と言えるような存在になっているからだ。国家が莫大な費用を投入しているのは確かなのだが、JR東海はそれ以上に費用を投入しているのだ。恐らく、テクノスーパーライナーと同じような間隔で批判しているのだろうが、テクノスーパーライナーと同列には考えられないプロジェクトなのだ。


まずは、googleニュースで検索できる記事から。

ただ、リニアを使って東京―大阪を1時間で結ぶ中央新幹線構想は、最大で約10兆円と見積もられる建設コストが障壁となっている。JR東海の宮本雅章・リニア開発本部副長は「コストは新幹線より2〜3割高いぐらいなのですが」と残念がる。

同社は4月、コスト削減などをさらに追究するため、実験線をあと24キロ延伸する方針を明らかにした。約3000億円を投じ、着工後7年で完成を目指す。
http://www.asahi.com/national/update/0902/TKY200609020240.html

この記事では、JR東海は単体で3000億円をつぎ込んでいる事が分かる。


もう少しまとまっているのが次の記事。

先行区間の設備や車両の更新を含め、約3000億円を単独で投じる。これまでは、鉄道総合技術研究所(JR総研)と事業費を分担。国の補助金山梨県の地元協力金もあった。JR東海自体は、実験線への総投資額を1965億円と見込み、05年度末までに1663億円を支出している。
リニアモーターカー実験線、JR東海が強気の延伸--人民網日文版--2006.06.25

つまり、JR東海一社で4600億円を超える投資を行っている事になる。


なお、山梨リニア実験線の建設費用は、次の答弁で分かる。

当初のいわゆる予算的な資金の計画が、現在のところ二千五百二十三億円ということで執行されておるという状況でございます。

具体的には、このうち、JR東海が約千六百億円、それから山梨県が、関連工事及び無利子貸し付けも含めまして百七十三億円、それから鉄道総研が四百二十一億円でございます。そういう一応の資金の執行額になっております。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/005814519990728010.htm

つまり、山梨リニア実験線においては、JR東海が4600億円を支出し、山梨県が173億円、鉄道総研が421億円である。さて、このプロジェクトを国家プロジェクトと呼んでいいものであろうか。


なお、リニアモータカーの年間予算は以下のサイトが参考になるだろう。

平成17年度予算の財務省原案(12月20日内示)で、リニア関連の予算は、国土交通省が要求した10億2300万円が満額で認められた。
http://www.pref.yamanashi.jp/cgi-bin/linear/backnumber.cgi?view=club&cnid=38