最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか


最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか

最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか


原題は"INVITING DISASTER"である。シンプルな原題の方が好みではあるが、日本語に訳すと印象が薄いかも知れない。こまったものだ。


内容はタイトルのごとく、様々な事故における、調査と原因追及の足取りを追ったものである。現代社会の中の技術に関して警鐘をならしたものであると言えるのだが、事故を防いだケースも数多く載っている。確かに現代社会に置いて技術的災害は危険なものでもあるが、防げる事でもあるのだと伝えているように思える。


例えば、この本にはスリーマイル島原発事故が取り上げられている。スリーマイル島原発事故の深刻さは描写されているし、何が原因で、どこに問題があったのかを詳しく伝えている。しかし、そればかりではなく、スリーマイル島の危機的状況を救った、メーラーという一人の運転員の姿も記されている。実のところ、このメーラーが自体を見抜き、スリーマイル島の危機的状況を解決したのだ。どのように解決したのかはここでは詳しく書かないが、重要なのは危機を解決に導いたことである。


本書は、次の言葉で結ばれている。これを読めば、この本は単なる事故原因の調査、責任の追及だけを目的にしていない事が分かるだろう。この本の真意は「最悪の事故が起きたときに、人は何をすればいいのか。そのためには、何が必要なのか」を問いかけているようにも、思うのである。

 真理を悟った人間は、道理に基づいた手厳しい質問を投げかける傾向が強いが、それこそがすべての優良組織が必要とし、歓迎すべき種類の質問なのだ。

 そうした情報とわずかばかりの健全な恐怖心とで武装したオペレーターやパイロット、技術者、管理者であれば、マシンのふるまいについて学習することができる。安全性を備えた工場の建設方法を知っているのはかれらであり、そしてまた、ものごとが不調になりかけたときに、広大なシステムのかなたで起きつつある衝撃波を感じ取れるのもかれらである。そうした人びとは、トラブル発生の前兆でさえ、難儀とは考えず、いく条かの光−マシンの深奥の最暗部に到達し、やがてはその秘密を明らかにしてくれる光−とみなすだろう。そして何よりも重要なことは、かれらは、いつもどおりの一日が大惨事にいたるまえに、行動を起こすだろうといういうことである。