その言葉は誰が言っているのか


医療関係者の間では関心を持たれている、桑名市民病院の和解事件について当ブログでも取り上げてみようと思う。基本的な事実関係はリードを読んでもらった方がわかりやすいので、引用する。

脳腫瘍(しゅよう)が悪化して重い障害を負ったのは、病院が適切な検査をせずに病気の特定が遅れたからだとして、桑名市の20代の女性が05年8月に桑名市民病院を相手どって2千万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に起こした訴訟で、病院は17日、女性に和解金300万円を支払うことで和解したと、発表した。同地裁の和解勧告に従った。
http://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000000611180002


この件、医師にとっては衝撃を与えている内容となっているようである。確かに、

名古屋地裁は、病院の診断に誤りはないとした上で、「早期のMRI検査で的確に診断していれば、その後の対応が変わった可能性があり、もう少し良い症状が期待できた可能性は否定できない」

こんな事まで裁判所に判断されては医師はたまらないだろう。病院の診断に誤りがないのなら和解金を支払うというのはおかしいし、以下のような事情もある。MRIの検査が一週間やそこら早いからと言って、もう少し良い症状が期待出来るわけがない。この文面だけ観ると、裁判所の言っていることは支離滅裂である。

病院によると、女性は02年の10月30日と11月2日に頭痛やめまいなどを訴えて来院。3日に水頭症や脳がんの疑いがあると診断され入院。5日のMRI検査で脳腫瘍が判明した。当時は歩行できたが、その後、悪化し、現在は植物状態という。

ここまでなら誰でも言える意見だろうし、他のブログでも同じようなことを言っているだろう。当ブログが取り上げる必要はない。では、なぜこのブログが取り上げたかというと、裁判所が本当に「早期のMRI検査で的確に診断していれば、その後の対応が変わった可能性があり、もう少し良い症状が期待できた可能性は否定できない」などと発言したのだろうかと言う疑問があるからである。MSN毎日と、中日新聞の記事を引用してみる。

病院側は「医療ミスはなかったが、MRI検査をもう少し早く実施すれば、確定的な治療が早まったとも考えられる」と説明。市民病院の水野雄二事務長は「MRI検査の時期がもう少し早かったらという女性の期待について、今となっては否定できない」と話した。
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/mie/archive/news/2006/11/18/20061118ddlk24100028000c.html

同地裁はことし8月、300万円での和解を勧告。両者は「加療行為の誤りはないが、MRI検査をもう少し早くしていたら的確な診断が少し早まり、もう少し良い症状が期待できた可能性があったことまでは否定できない」として和解に合意したという。
桑名市民病院、和解金300万円で合意\中日新聞

朝日新聞では「裁判所」が発言したことになっていた言葉が、MSN毎日だと病院側の主張となっているし、中日新聞では当事者双方の主張となっている。とすると、朝日新聞の報道が本当に正しいのか疑問符がつく。裁判を行い、判決文が裁判所のコメントとして紹介されるのはよく目にするが、和解で裁判所がコメントを述べるというのも珍しいように思う。


これも、いわゆるマスコミの偏向報道の一事例なのではないかと思うのだが、いかがだろうか。