宇宙開発には軍需も官需も必要だと思う
朝日社説 日本の宇宙開発―技術は軍より民で磨け : asahi.com(朝日新聞社) - finalventの日記を読んで、驚いた。これ、まるで話が違いますよ。
たしかに偵察衛星も地球観測衛星も基本技術は同じだ。それなら企業間の競争がある民生部門でこそ技術を磨くべきだ。米国の商業衛星は数十センチのものを見分けることができ、日本の情報収集衛星の能力を上回っている。
これはおそらくアメリカのイコノスの事を指していると思うけども、イコノスがどのような種類の衛星なのかと言うと。
米国の軍事偵察衛星の技術を基に開発され、1999年に打ち上げられた世界初の商業用高分解能地球観測衛星。世界中どこでも最高82cmの地上分解能で撮影することができます。
http://www.spaceimaging.co.jp/planet/ikonos/tabid/72/Default.aspx
商業衛星であるイコノスは、確かに日本の情報収集衛星より性能は高い。しかし、イコノスの技術の源流を考えた場合、どう考えても軍事衛星、偵察衛星の技術が転用されたわけで、民生部門で磨かれた訳ではない。イコノスに対抗しようと思うのであれば、日本も軍事衛星、偵察衛星にお金を莫大に投資して、そこで磨かれた技術を民間に転用する他はないのではないだろうか。
また、GXロケットに関しても話が違っている。
安全保障の名の下に採算を度外視した計画が増えれば、民生部門にしわ寄せが及ぶ恐れもある。計画が遅れて費用が大幅に増え、その意義が薄らいでいるGXロケットも、安全保障目的で開発が正当化されようとしている。
これだけ読むと、GXロケットは官主導であると誤解する人もいるかも知れないが、GXロケットは実は民間主導のロケットなのですよ。
昨年2月から文部科学省の宇宙開発委員会で始まった中間評価では、中止論が飛び交った。自民党無駄遣い撲滅プロジェクトチームも8月、凍結すべきだと判定。開発予算の一部は執行が停止された。
しかし、民間側の開発主体のIHI(旧石川島播磨重工業)と自民党の一部はGXにこだわる。8月に宇宙基本法が施行され、宇宙政策の最終決定権が戦略本部に移ったこともあり、同委員会は結論を出さずにいる。そして戦略本部が下した「裁定」も玉虫色。決着は先送りされた。
https://aspara.asahi.com/blog/science/entry/bnqwYBEGdD
民間主導の計画で始まったにもかかわらず、位置づけが曖昧であった。LNGロケットという新技術の開発難航も原因だが、そもそもコンセプトが曖昧だったため、実際には予想以上の費用をかけることになってしまった。そこで、国に救済して貰おうというのがGXロケットであり、安全保障目的というのも民間を救済する大義名分と言う事なのです。
以上より、宇宙開発を進めるにあたり、官需・軍事だからダメと言うわけではなく、民需だから良いという訳でもないと言うことが分かります。官需・民需で得た技術を積極的に民間に転用すれば、それは競争力の強化に繋がりますし、民間主導だからと言って、政治力次第でねじ曲げられてしまうと言うことがGXロケットの件から分かります。
では、宇宙開発を推進していくためには、どうすればいいのだろうか。現状を見る限り、宇宙空間を利用する一番大きなユーザーは「国」であり、技術のキャッチアップ、独自技術の開発に関しては国が行うべきである。そして、国による開発で技術を身につけたあと、他国へと衛星を販売し、市場開拓、技術の展開を図るべきではないかと思う。
官需・軍需・民需というのはバランスの問題であり、官需・軍需によって土台を育て、民需という花を咲かせば良いのではないだろうかと私は思う。