法定受託事務に関して調べてみたよ

下記のサイトで,興味深い指摘がされている.
東国原知事に対して激詰めした南日本新聞の記者が勉強不足である件 - 常夏島日記

前田記者は、家畜伝染病予防法における蔓延防止策の主語は知事であることを根拠に、国ではなく、知事が一義的に責任を負うべきではないか、と言っているように考えられます。

しかし、家畜伝染病予防法だけ読めばそう見えるのかもしれませんが、地方自治法においては、家畜伝染病予防法の蔓延防止措置は、「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」と位置づけられており、したがって、家畜伝染病予防措置は、国の役割であることが明記されています。

しかし,疑問が残る.家畜伝染病予防法の字面だけ見れば,主体は知事としか読み取れないのである.

第十五条  都道府県知事又は市町村長は、家畜伝染病のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、政令で定める手続に従い、七十二時間を超えない範囲内において期間を定め、牛疫、牛肺疫、口蹄疫又はアフリカ豚コレラ患畜又は疑似患畜の所在の場所(これに隣接して当該伝染性疾病の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある場所を含む。)とその他の場所との通行を制限し、又は遮断することができる


これはどういうことだろう.wikipediaをひもといてみる.

地方分権一括法により、機関委任事務及びその他従来からの事務区分は廃止され、かわって地方公共団体の事務は法定受託事務自治事務に再編成された。法定受託事務には自治事務に比して国(都道府県)の強力な関与の仕組みが設けられているが、自治事務と同様に地方公共団体の事務であり、「受託」という名称に関わらず、国や都道府県の事務が委託の結果、地方公共団体の事務になったと観念されるわけではない。
法定受託事務 - Wikipedia

この記述を踏まえると,地方公共団体の事務の一部に対して国が強力に関与できる仕組みが設けられていることを「法定受託事務」と言うと解釈できる.「本来は地方自治体の仕事だが,地方自治体が行動しない場合は国が介入できる」という事なのかな.この仮説をベースに検索を行う.google様に祈ると,次のような文書が見つかった.

(1)地方公共団体に対する国又は都道府県の関与等の基準
ク 指示
(ア) 国は、地方公共団体の行政については、以下の場合等特に必要と認められるときを除き、地方公共団体がその自治事務の処理について国又は都道府県の指示に従わなければならないこととすることのないようにしなければならない。
a 国民の生命、健康、安全に直接関係する事務の処理に関する場合
b 広域的な被害のまん延防止の観点からの事務の処理に関する場合
(イ) 国は、地方公共団体の行政については、法定受託事務の適正な処理を確保するため特に必要と認められる事項及び場合には、地方公共団体に対し指示を行うことができる。
個別法における「指示」について


言葉の意味はよく分からないが,地方の事務処理に対して,国の介入を防ぐ強固な仕組みが作られているのだなと感じた.読み進むと,個別法における「指示」の規定として,家畜伝染病予防法の47条が例に取り上げられている.これか.

農林水産大臣都道府県知事に対する指示)
第47条 農林水産大臣は、家畜の伝染性疾病の発生又はまん延により、畜産に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、都道府県知事に第6条、第9条、第17条、第26条第1項若しくは第3項、第30条、第31条、第32条第1項、第33条又は第34条の規定による措置を実施すべき旨を指示することができる。
家畜伝染病予防法,(略)家伝法

家畜伝染病予防法の条文の一部に関して,農林水産大臣は知事に実施を命令できる訳か.これを「国(都道府県)の強力な関与の仕組み」と解釈することは十分に可能だろう.知事としての当事者能力がない,あるいは当事者能力を失った場合は,農林水産大臣が命令しろと言う事なんだろう.主体はあくまでも知事と言う事だと思う.47条が万一発動される事態になったら,それは知事に無能の烙印を押す事になるな.


以上はあくまで私の解釈であり,他の方の解釈も聞いてみたいと思います.意見があればコメントなりぶくまなりトラックバックでお願いしますね.と,ここまで書いて,元サイトのコメント欄に詳しい意見が書いてあったことに気がついた.無駄になったみたいだが,書いてみることにする.