消費者金融が人を助けている話

消費者金融が批判されている昨今であるが、その批判は正当なものだろうか。ちょっと見方を変えてみると、消費者金融への批判が賞賛に変わるのではないだろうかと言うのがこのエントリーの趣旨。ネタ元は国民(多重債務者)を見捨てアメリカ資本(サラ金)に配慮する金融庁 - 木走日記

S氏は商店街で小さな飲食店を経営している個人事業主であります。

彼はいわゆる消費者金融多重債務者であります。

資金繰りの悪化から消費者金融に手を出し、現在では5社から総計390万円の借金を背負っています。

問題は、いわゆる利息制限法が認める15〜20%の金利と、刑罰がある出資法の上限29・2%の間の「グレーゾーン(灰色)金利」が彼の借金にも適用されているために、悲しいことに例えばA社の月々返済3万円の内訳ですが、元金充当額はわずか1万2千円ほどであり、金利返済分のほうが大半なのであります。

S氏の場合、彼のお店自体が幸いにもここ3年黒字に転じたことから、組合を通じて公的融資を何とか150万円できることになり、そのお金でもっとも負担の大きなC社の150万円枠の借金を完済させ、比較的低利の公的融資に切り替えることができたのでした。


なるほど、消費者金融の高金利に対する批判がきちんと描かれている。しかし、見方を変えてみると「消費者金融のおかげで助かった」ケースと考えることも可能である。


ポイントは「資金繰りが悪化している飲食店」に誰が金を貸すのかという点である。銀行や公的融資に頼る方法もあるとは思うが、このケースの場合は消費者金融で借りるほどだから、他の方法があったとは思えない。返済額のほとんどが金利返済分に回ると言っても、消費者金融のおかげで取りあえずは事業を回せた訳である。そして、消費者金融で事業を回しているうちに黒字になり、他の低利の融資に切り替えることができた訳である。つまり、一番苦しい時期を支えたのが消費者金融であることに注目するべきであり、その苦しい時期に事業を支えた消費者金融を「金利が高い」と言う一言で批判するのは正当ではないと考える。


このケースの場合、理想的な展開であるように思う。「資金繰りの悪化」→「高金利消費者金融で一時的に事業を支える」→「業績の改善」→「低利の融資に切り替え」と言うルートが成立した訳であり、もし消費者金融がなかったと仮定すると、資金繰りが悪化した途端に倒産していたのは確実であろう。


現在、消費者金融に対して低利を求める方向で、社会的圧力がかかっている訳である。低利率は結構なことだが、貸し手側の査定も厳しくなるのは必至である。つまり、今回のSさんのような「現状を維持していれば黒字転換する可能性がある」所にも貸してくれないケースも出てくるだろう。つまり、「黒字転換」の可能性は摘まれてしまう事になる。


再チャレンジが叫ばれているのとは裏腹に、中小企業経営者には厳しい世の中になりつつあるのではないだろうか。